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2013年07月22日

うどんが冷めないうちに…

【「プチ紳士からの手紙」コラム掲載4周年記念特別企画その9】

コラム掲載4周年を記念して、過去のコラム記事を掲載しています。

プチ紳士からの手紙」
うどんが冷めないうちに…


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「プチ紳士からの手紙」 2012年2月号

私が一番受けたいココロの授業

 「うどんが冷めないうちに…」 比田井美恵


一人で出張をしていたある日、
私は昼食にしようと、うどん屋さんに入りました。

元気なあいさつが気持ちいいその店は、全国展開するチェーン店。
セルフ方式でトレイを持ちながら移動して、まず、うどんを作ってもらい、
おにぎりや天ぷらを取って、最後にレジで会計をする、というスタイルです。

お気に入りの肉ごぼうが載ったうどんに温泉卵を入れてもらい、
揚げてあるキスとイカの天ぷらを取り…さぁ会計、となった瞬間に、
ハッと気が付きました。

「そう言えば、さっき買い物をしたんだっけ! お金が足りないかも!」

急いでお財布を開いてみると、中には小銭しか入っていません。
レジには、730円と表示されているのに、
何度数えても、たった505円しかないのです。

私は大慌てでレジの女性スタッフに伝えました。
「すみません! お金が足りないんです! 505円しかないんです…」
彼女はびっくりし、困った顔をしています。

スーパーでの買い物なら、商品を戻して買わずに帰ればいい話なのですが、
うどんを作ってもらってしまった以上、そういうわけにはいきません。
天ぷらは返せたとしても、うどんの値段だけでも530円です。

「ごめんなさい! ちょっと車の中を探して来ていいですか?」
私はそう伝えると、商品をカウンター脇に置き、店の前に止めた車に向かいました。

もう必死です。
書類ケースの中、ダッシュボード、上着のポケット
…どこかに小銭が落ちていないかと血眼で探しまくりました。

這いつくばって、シートの下に手を入れたところ、
何やら硬貨の手触りが!…「お願い! せめて100円玉!」
…と祈りながらつまみ出したところ、

10円玉…。

合計515円で、まだ15円足りません。

…頭の中は、後悔の言葉ばかりがぐるぐるとまわっています。

「どうして、はじめにお財布の中身をチェックしなかったんだろう?」

「あの買い物さえしなければ…」

「温泉卵を入れなければ、480円ですんだのに
 …なんでこんな時に限って、ぜいたくしちゃったんだろう?」

…どっと汗が出てきました。
焦りと情けなさで涙が出そうになったその時
…後ろから、私を呼ぶ声がしました

「あの…お客様…」
…振り返ると、先ほどレジで対応してくださった女性スタッフです。

彼女は、レジが少し空いた瞬間を見計らって、
他のお客様の目につかないように、
こっそり店を出てきて声をかけてくれたのでした。

彼女は言いました。

「あの、お客様、せっかくのうどんが冷めてしまいます。
 もしお金が足りなくてキャンセルになっても、
 あのうどんは廃棄処理になってしまうんです。

 ですので、今お持ちのお金を全部出していただければ、
 それで結構ですから、温かいうちに、うどんを召し上がってください。」

私は驚くと同時に、「救われた!」という気持ちになりました。
でも、もちろん、そんなわけにいきません。

「それでは申し訳ないので、後日、必ず差額を払いに来ます。」

「いいえ、私の方で処理しておきますので、差額は結構です。
 それよりもお客様、冷めないうちにお早くどうぞ」

私は、ホッとしたのと感動したのとで、
思わず涙ぐんでしまいました。

そして、悪いと思いながらも彼女の言葉に甘えさせていただくことにして、
お店に戻りました。

レジの横には、私が注文したうどんと、
お皿にとった天ぷらが置いてあります。

私が「天ぷらはお返ししてもいいですか?」とお聴きしたところ、
彼女は「いいですか? 申し訳ないですね」…なんて言うのです。

間違えたのは私で、私の方が申し訳ないのに、
彼女は本当にすまなそうな顔をして、私に頭を下げるのです。

さて、お会計です。レジにはピッと「480円」が表示されました。
私が注文したうどん530円の下の値段の商品は480円だったのです。

私はもちろん、515円を出したのですが、
彼女は、「480円ですから…」と、
35円のおつりを私の手の上に載せ、
またしてもこう言ったのです。

「冷めちゃって申し訳なかったですね」

…何度も頭を下げる彼女の姿が涙で見えなくなりながら、
私は「ありがとうこざいました」と繰り返すしかありませんでした。

この日のうどんの味と、彼女の申し訳なさそうな顔…私は一生忘れないことでしょう。

今回は、明らかに私のミスです。
店員さんに怒鳴られたり、
嫌な顔をされたりしてもおかしくない出来事です。

なのに、彼女は一切そんなそぶりも見せず、
逆に何度も私に頭を下げてくれました。

そして「冷めないうちに…」の言葉の奥には、
「うちのうどんを温かいうちに食べてほしい」という、
うどんに対する愛情が感じられました。

お客様を大切にし、
商品を愛する心を持った彼女の姿勢から、
たくさんのことを学ばせて頂きました。

こんな素敵な女性に出会えたなんて、本当にありがたいことです。

あの日以来、私は彼女への感謝の気持ちを込めて、
出張でそのチェーン店のうどん屋さんの近くを通るたびに、
律儀にその店で食べています。

もちろん、店に入る前には必ず財布の中身をチェックして…。


追記

このうどん屋さんのお名前をご紹介したい気持ちもあったのですが、
お支払いに関することでもあり、
お店にご迷惑がかかってもいけないので、掲載は控えさせていただきました。

でも、全国500店以上展開するお店です。あなたの街にもあるかもしれませんね。

(「プチ紳士からの手紙」 2012年2月号より引用)

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プチ紳士からの手紙」
うどんが冷めないうちに…



Posted by 比田井美恵 at 23:59│Comments(0)
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