あなたを苦しめているのは、あなた自身だ
比田井通信-私は幸せです!-第733号
(2021.10.30発行)
先週の続きです。
高校3年生の春休み、
大愚青年は自分にほとほと嫌気がさし、
とにかく自分のことを
知っている人が誰もいない
そして、自分が知っている人が
誰もいない場所に行きたくなって
親にも内緒でオーストラリアに行きます。
ある時、ヒッチハイクで
乗せてもらった運転手さんは
とっても感じが良い運転手さんでしたが
夜中、砂漠の真ん中で降ろされてしまいます。
大愚青年はそこが砂漠の真ん中だとは
気づいていませんからちょっと歩けば
町に着くだろうと思いながら歩くのですが、
1日歩いても2日歩いても
町にたどりつかないんです。
まさかそんなことになるとは
思ってもいませんから
食料も水もなくなってしまいました。
大愚青年は怖くなります。
自分はこのまま誰にも知られることなく
死んでしまうのではないかと・・・。
皆さんがもしそんな状況に
なったらどんな精神状態になりますか?
お腹も空き、喉も渇き、
最初は自分の汗をなめていたそうです。
そのうち、水たまりの水を飲んだりもしたそうです。
そんな水を飲んだらお腹も壊します。
体調も悪くなります。
それでも歩くしかありません。
そんな時、大愚青年は
気持ちを紛らわすために
歌を歌うんです。
ところが、最後まで歌える歌が
なかなかないんです。
大愚和尚も言っているのですが、
そういう時と言うのは
完全なものを求めたくなるそうです。
心が不安定な時は安定を求めたくなるんですね。
ところが完璧に最後まで歌える歌がなかなかない、
歌ですら最後まで歌える歌がない。
それでまた不安になるんです。
そんな精神状態の中、
気がつくとブツブツ、ブツブツ
自分が何か言っているんです。
自分を励ますために
何かブツブツ言っているんです。
なんとそれは
「お経」だったそうです。
極限状態の中、
勝手に自分の中から出てきたのが
お経だったんです。
小さい頃から刷り込まれてきたお経は
最初から最後まで言うことができるんです。
完璧なんです。
面白いものですね。
あれほど嫌だったお経が
極限状態になったとき、
大愚青年の内側から出てくるんです。
たまにトラックが通るそうですが
ヒッチハイクで手を挙げても
そんな怪しい東洋人、
誰も拾ってなんかくれません。
もう疲労困憊なんです。
もうダメかもしれない…
と思っていたとき、
幸いにもオーストラリアの陸軍が
何年かに一回砂漠の中で
演習をする、その帰り道に
大愚青年を拾ってくれたそうです。
大愚青年は陸軍のジープに
町まで乗せていってもらって
命拾いをしました。
大愚青年は食べ物も食べたい
水も飲みたい
温かいシャワーも浴びたいと思い
ユースホステルに泊まります。
久しぶりの食事に、
シャワーにふかふかのベッドです。
どれだけ幸せでしょう。
私も1ヶ月テント生活で
オーストラリアをバイクで旅してきて、
1ヶ月ぶりのホテルのベッドが
これほど有難いものなのかと
しみじみ感動した…
そんな感覚を思い出しました。
翌日、もうくたくたですし、
お腹の調子も悪いですし、
そんなこともあり
チェックアウトの時間に
間に合わなかったそうです。
フロントでは追加料金を請求されます。
もうお金があまりない大愚青年は困って、
「お金がないのでお金を支払う代わりに
働かせてください」と言って掃除や皿洗いや
バックヤードの仕事を半日ぐらいやって
やっと解放されます。
その後、まだまだ体力が戻っていない大愚青年は
公園のベンチで寝ます。
ところが、オーストラリアには
インチアントと言う大きなアリがいます。
そのインチアントに噛まれたりするのですが
それでもその日の夜はお金がなく
その公園のベンチで寝たそうです。
たとえ男でも、
夜ベンチで寝るなんていうのは
とても危険なことなのですが、
もうそんなことが危ないと思う
気力すらないんです。
その後、なんとかアデレード、
メルボルンを経由して
最終目的地のタスマニアに
たどり着きます。
映画「タスマニア物語」に出てくる
セントクレアナショナルパークという
国立公園にも行きました。
セントクレアナショナルパークの出口に
登山者を迎えにくるバスが来てくれて
そのバスに乗りました。
バスの中はガラガラで
1番後ろの隅の席に座ってたそうです。
もうそこで体力を使い切ったような状態になり
大愚青年はバスの中で寝てしまいます。
しばらく寝て、あっと気づいて
目が覚めると、シートが
ベタベタに濡れているんです。
「あれ、何だろう・・・」と
不思議に思ったのですが
…それは自分の涙でした。
眠りながら泣いていたんです。
それに気づいた大愚青年は
なんだかわからないけど
また涙がでてきて、
オイオイ、オイオイ
泣いてしまったんです。
まばらではありますが
他にもお客さんは乗っています。
突然、東洋人の青年が
1番後ろの席で泣いているのを見て
みんな気になってチラチラ見ます。
それを見られたくなくて
声を押し殺そうとするんですが
押し殺そうとすればするほど
涙が止まらなくなってもう嗚咽なんです。
そしたら今度は頭の中で
生まれてからのいろんな出来事が
走馬灯のように思い浮かびます。
両親に反抗したり、
友達と喧嘩したり、
妹にひどいことをしていたり、
自分のわがまま勝手な部分が
次から次へと頭の中を駆け巡るんです。
大愚青年は
「もう親の世話になんかならなくてもいい」と
啖呵を切ってオーストラリアへ出てきたんです。
でも、オーストラリアへ来れば
食べるものも、洗濯も、
寝るところも、移動も、
全部自分でなんとかしなければ
いけませんでした。
日本にいた頃は
食べるものも
着るものも
寝るところも
お金だって
親が出してくれていました。
ガチガチで窮屈だと思っていた日本が
「なんて有難いところだったんだ」と
そんなふうに思えたんです。
「お金さえ持っていれば
自分1人で生きていける」
と思っていた大愚青年ですが
それは間違いだったことに
理屈ではなく体で感じることが
できたんです。
それに気づいたとき
「自分はなんてワガママで
自分勝手なことをしてきたんだ」
と心底思ったそうです。
「今頃、親は心配しているだろう」
とそんなことが急に心配になり、
そう思ったら申し訳なくて申し訳なくて
どうしようもなくなります。
その後、不思議なことが起きます。
泣いて泣いて、泣き疲れた頃、
バスがパーキングエリアに止まり
大愚青年はトイレに行きます。
そのバスへの帰り道
別に珍しい花でもないんですが
たまたま見たその花が
やけにキレイに見えるんです。
ものすごい鮮やかな色に見えたんです。
「あぁ~きれいだなぁ~」と
オーストラリアに来て初めて思えたんです。
そこに来るまで、
いろんなきれいな景色も
花も見てきたのに
それまではそんな風には
1度も思えなかったんです。
でも、泣いて泣いて
心がスッキリすると
もう見える景色が全然違うんです。
何でもないような花が
ものすごいきれいに見えるんです。
大愚青年はそんな経験をしているんです。
私、このエピソードを聞いて
また思いましたよ。
「だから大愚和尚の言葉は沁みるんだ・・・」と。
だから、
「あなたを苦しめているのは
ほかの誰でもない。あなた自身だ」
と言い切れるんです。
本当は幸せな環境にいたのに、
それに気づかずに
自分で自分を不幸にしていたと
気づいた人なんです。
大愚青年はその後
親に手紙を書きます。
自分が思い上がって
生きていたことを謝りました。
大愚青年は
「もう日本には帰ってこない」ぐらいのつもりで
オーストラリアに行きましたが
親は駒澤大学に受かった通知がきたあと、
授業料も振り込み、寮の手配も、
手続きも全てしてくれてあったそうです。
おかげで大愚青年は
駒澤大学に進学することができました。
「親って有難いですね」と
大愚和尚は言っています。
ホントその通りですね。
今日はこの辺にします。
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