自分の仕事が誰かの幸せにつながる喜びを感じてください

比田井美恵

2014年02月04日 23:59

原伸介さんの記事の続きです。

※前回までの記事はこちら
2014/01/29 後ろ指を指す人は、自分より後ろにいる人


2014/01/30荷物はしょわされれば重い。自分でしょえば軽い。



さて、炭焼きに没頭していた原さん、
27歳の時に、最高の炭を作り上げます。
夜中の2時。
素晴らしい炭が完成し、窯出しをすると思わず声が出ました。
「よっしゃ~!!」
大興奮です!!

…しかし、その興奮はわずか5分しか持ちませんでした。
最高の炭ができたはずなのに、
誰もいない山の中で
夜中の2時に
一人でガッツポーズ…。

一緒に喜んでくれる人もいない。
もしかしたら自己満足なんじゃないかと…。


その時に、ふと思い出しました。
自分の炭を使ってくれているレストラン「ドマノマ」のシェフが
「原さん、一度食べに来て下さいよ」と誘ってくれていたことを。

…なぜか、そこに行かなくちゃいけないと思った原さん、
すぐにドマノマに連絡をし、食べに行きます。


カウンターで一人、
お酒を飲みながら静かに食事をしていると、
近くに5人家族が来ました。
やけに静かな家族です。

会話が全くありません。
前菜が運ばれてきました。

みんな静かに食事をしています。
食器の音がカチャカチャとするだけ…。
シーン…とした中で
食事が淡々と進んでいきます。

原さんは、その家族のことが気になって仕方ありません。

そんな中、
テーブルに七輪が運ばれてきました。
家族で炭火で焼きながら食事を進めていくのです。
原さん、ドキドキです。

そして…テーブルに七輪がおかれた途端、
空気が変わりました。
まずお父さんが変わりました。
炭を見て興奮したのでしょう。
「早く、これを焼きなさい!
 そうじゃない、こうするんだ!!」
急ににぎやかになりました。

おばあちゃんも、
「昔はこれをおこたつの中に入れていたのよ。
 温かくてね…」
なんて話し始めます。

先ほどと同じ家族とは思えません。
全く別の家族になったのです。

そこには、
楽しそうに七輪を囲み、
原さんの炭で焼いたものをおいしいと食べ、
笑顔で話をする、
温かい家族がありました。

原さんは、そこで気付きました。

「自分の焼いた炭で
 人に喜んでもらうために
 炭を焼くんだ。

 ありがとうと言ってもらうために
 炭を焼くんだ。」と。

その家族が楽しい炭火焼きを終え、
帰ろうとした時、
思わず立ち上がって「ありがとうございました!!」と
言っている原さんがいました。

(お客として店にいたのに、
 自然と体が動いてしまったとか…。
 ご家族はビックリしていたそうです)

原さんはおっしゃいました。

「自分の持っている技術、知識、経験で
 目の前にいる誰かに喜んでもらう…
 これに勝る幸せなんてない」と。

そして、学生たちに話しかけてくれました。



「みんなはこれから社会人になっていろんな仕事をすると思うけど、
 自分の仕事が、誰かの幸せにつながる喜びを感じてください。

 たとえどんなちっちゃな部品をつくっていたとしても、
 それは必ず機械になって、
 必ず人が使う。
 使っているシーンを想像してみてください。

 きっと、同じように見えても
 違うと思うんですね。

 嫌だなぁ…と思いながら作っている部品と、
 この部品が機械になって、人の役に立つと
 思いながら作っている部品と。

 同じように見えても絶対に違うはずです」

原さんのお話、本当によかったです。

今までに3回にわたって連載してきましたが、
実は、原さんのお話の真骨頂は実はここには書いていません。

(と言うか、誰かの話のレポを書く時は、 
 私はいつも一番大切な、メインの話は書かないようにしています。
 やっぱり、「話のキモ」の部分まで私が書いてしまうのは
 その人に失礼だと思うので…^_^;)

ということで、
原さんのさらに深い話を知りたい方は、
ぜひ原さんの本を読んでくださいね。

原さんがどん底まで落ち込んでひきこもりになった話や、
そこから脱出した話、
奥さまからの一言がきっかけで
変わることができた話など、
興味深い話がたくさん載っています。

「山の神さまに喚ばれて (修行編)」(著:原伸介 出版:フーガブックス)


 「生き方は山が教えてくれました」(著:原伸介 かんき出版)
 



また、「ドマノマ」に原さんの炭で焼いた食事を求めて
比田井家で食べに行った話はこちらに載っています。

2014/02/02 比田井家の休日「原伸介day」


2014/02/03 男は自分で火をつけられるようになると自信を持つ


以上で、原さんのお話のレポートは終わりです。
長々とお付き合いいただきありがとうございました!(*^^*)